壁打ち

感想、考察、日記、メモ等

20231011(漫画『ベルセルク』感想 ※「断罪篇 縛鎖(ばくさ)の章」まで)

今まで気になっていたが読んでなかった漫画『ベルセルク』、

無料配信の期間で「断罪篇 縛鎖(ばくさ)の章」まで読みました。

めちゃくちゃ好みの漫画でよかった。そしてこのタイミングで読めてよかったと思った。

 

 

昔から漫画を読んでいると、よく作者あとがき的なところでベルセルクについて書かれてたりして、「有名&超大作」という印象だった。

ただ表紙だけ見て、劇画と青年誌の間くらいの絵のタッチで主人公も渋めだし、ハードボイルドなんだな~くらいに把握しており……自ら読もう!という感じではなかった。

 

真面目に興味を持ちはじめたきっかけの一つとしては、平沢進氏がアニメに楽曲提供していたこと。

学生時代の僕は平沢進(敬称略)にハマっていたが、ベルセルクに近未来、幾何学的な音楽は合わないのでは?という違和感というか、

いやむしろ自分がベルセルクという作品について、ズレた認識を持っているのかもしれない……と思い至った。

 

あと、shu3が”蝕”のシーンのキャスカで「目覚めた」と言ってたので、気になっていた。

(shu3と嗜好が被りがちなので)

 

 

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実際読んでみると、(作品を他の作品に例えるのは野暮と承知で)

無限の住人」と「ブラスフェマス(ゲーム)」の世界観が混ざり合って、

なおかつSFと哲学を織り交ぜたような作品だと感じた。

 

主人公は(現状の目的としては)宿敵を斬ることで生きる意味を繋いでいて、あらゆる武器や手段を用いて単騎で戦う。(道中出会う人々はいるが、最終的には己の孤独に向き合うような道を行くことになる。)

この辺はむげにんと似ているが(初出をみるとベルセルクが先(多分)だが、むげにんは雰囲気とかで連載当時似てるとかパクリとか言われたりしただろうか……)

 

無限の住人は「人間でなくなった主人公」がそれでも生きる目的として「人間という悪」を斬るとしたのに対し、

ベルセルクは抗えない運命に流され続けた結果、「生き残ってしまった人間」の最後の抵抗として「人間ではないもの」と戦う、という部分が違っているというか、対称的になっている気がする。

だから描かれている内容も相反したものになる。

 

ブラスフェマスを挙げた理由としては(この作品に触れてしまって以降、あらゆるものがブラスフェマスに繋がってしまうようになった脳ではありますが)

歪んだ形で奇蹟を成就するという部分や、中世ヨーロッパ(ざっくりとした印象)をベースとしていること、グロテスクな悪魔の造形や「蝕」など非道な目に遭い死んでいく人間、そして人間でなくなってしまった者もまた運命の所業のうちであるとされている点が近しいものを感じた。

 

「蝕」は理不尽に蹂躙されるシーンが見たいから好きという訳ではないが、運命のため儀式のため「犠牲」になるという点でめちゃよかったです。性癖……

 

 

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今回読んでみてよかったのが、主人公(ガッツ)が必ずしも100%強者な訳ではないというのが知れたこと。

 

作品の中でガッツは何度も恐怖に囚われ、怯え、苦しむし、それは何度も「新鮮な脅威」として彼に襲い掛かり、ガッツは修羅場を何度も超えていながらも迷いや恐怖に慣れることがない。

物理的なパワーや技量は主人公補正があっても、心のうちや人生を通しての歩みは主人公としてはかなり「カッコ悪い」「情けない」シーンも多い。原動力として不安や恐怖という負のエネルギーをまとっている。

 

そこがとても意外だったし、それでもガッツはカッコいいし、ベルセルクという作品の特徴として特に魅力的な部分だと思った。

 

 

僕は強くてどちらかといえば無口で無骨(がさつ?)で、ワルな部分や手を汚す場面もありつつ義理は通すみたいな主人公が好きなので嬉しい。

(無口な主人公という条件的に、ゲームの方が主人公が好きなパターンは多いかもしれない。ブラスフェマスの悔悟者とかOFFのバッターとか……)

 

 

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あと、ガッツとグリフィスの関係性が凄すぎた。

キャスカじゃなくても男女問わず、この二人の関係性を前にして正気じゃいられないのでは……と思ったほどに。

 

ベルセルクでは生き方等々について登場人物が「わからない」と思い知らされるシーンがすごくたくさんあって、

自分の信条に背いてしまった時の「なぜ?」や、そもそも自分が信じているものが果たして何なのか、本人でもわからないものなのだと思い知らされる。

 

 

キャスカの他者(ガッツや王妃)に対する嫉妬や葛藤とかは、要約してしまえばジャンル問わずよくある恋や敬愛のジレンマだけれども、

出会った時から時系列順に人間関係や「グリフィスと自分(キャスカ)」の関係性が変わっていくのを見ると、「よくあるジレンマだなー」と客観的には思えても、その感情が真に迫っている感じがして身につまされるような気持ちになる。

 

そしてキャスカがなぜ?と悩む場面では、「よくある人間関係の悩みの描写」ではなく「一世一代の、唯一無二の自分の中に生じた悩み」なんだと感じるような気がした。

 

 

なぜキャスカのことばかり書いてるのか?というのは、僕がキャスカめっちゃ好きだからです。

 

 

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本当はこれを機会に一気に読み終えたかっらけど、じっくり読みたい作品だとわかったし他にもやりたいことは色々あるのでここで一旦休憩しておきます。

 

ベルセルクに限らず、これはいつも本当に本当に作家さんには申し訳ない話なんだけれども、

僕は完結している作品じゃないと完走できないことがほとんどなので、手に取れるのはもう少し先になるかもしれない。

 

 

 

 

とりあえず生きる意味が一つ増えたのでよかったです。

今のところはそんな感じでした。