壁打ち

感想、考察、日記、メモ等

ゲーム『Neverending Nightmares』個人的な話をたくさん含む感想

『Neverending Nightmares』をプレイした。

 

 

ネタバレなしシステム説明

・こんな人におすすめ(下記苦手要素を加味しつつ…)

 

※ホラー&スプラッタ、自傷行為精神疾患描写、死体の描写が苦手な人はご注意ください※

※絶叫や呻き声、吐息のような生々しい音響が苦手な人はご注意ください※

 

ゴーリー風のペン画タッチが好きな人。(ストーリー自体はnotゴーリー

ストアページ等の雰囲気を見て、アクションや凝ったギミックは苦手だけど世界観を味わいたいと感じた人。

廃墟ゲーが好きな人。

 

・システム

操作は移動とアクションのみ(十字移動&ダッシュボタン、アクションボタン)。テクニックが要求されるアクションや謎解き要素はほぼない。基本的に足が遅い。

ドアノブ等アクションの取れるオブジェクトには色がついているので、見落としが少なくて親切。多分色なしオブジェクトがあるとか、隠し要素もないはず…細かく試してはいないが、意地悪な隠しを仕込むようなゲームではないと思う。

 

・ゲームジャンル

ゲームをしている、というよりは(それこそゴーリーのような)絵本を読んでいるような感覚が特徴的だった。

視界の端で影が動いたりするような「演出」は一度しか見られないので、画面をじっくり観察しながら進んだ方が楽しめると思う(血眼になるほど目をそらしてはいけない訳ではないけど…)。ゆっくり時間の取れる時にプレイするといいと思う。

 

・ネタバレ&苦手要素回避について

ネタバレをできる限り見たくない人は、ストアページの画像を薄眼で見てください。

逆に「ホラーはできるけどスプラッタは苦手」という人はストアページの画像一覧が大丈夫か否かで判断していいと思われます。

(勿論他にも要素はあるので責任は負えません。僕個人の耐性がつきすぎて感覚がバグってる可能性もある……)

コミュニティページはネタバレ満載なので、クリア前には見ない方がいいです。(どのゲームでもそうか…)

 

エンド分岐はありますがトゥルーエンドが(多分)ないので、把握しておくべき取り返しのつかない要素や詰みパターンはないです。

チャプターがあるので、一周目クリア後(というか、チャプタークリア後?未検証)はエンド分岐が表示され、特定の地点から始めることができます。

 

 

ネタバレなし説明、以上。

 

 

 

 

 

 

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ネタバレあり感想

1.

システム

移動とアクションボタンのみのゲームは何本か遊んでいるけど、それでもここまでアクションや謎解き要素が少ないのは初めてだったので驚いた。

 

プレイしたのが休日だったので、時間をゆっくり使いながらプレイできたのはラッキーだった。平日の短い時間に気分転換したい、とかには適さない。

どうせやるなら世界観にどっぷり浸れる心身の余裕がある方がいい、逆に余裕のない時にプレイするとやきもきしてしまうかも。足遅いし……

 

というか、足が異様に遅いのも、似たような部屋をぐるぐる回るような感じも、悪夢独特の嫌さがあってよかった。悪夢のリアル感。

 

隠し要素を探さずにはいられない人間なので、色のついたオブジェクト以外にはアクションの必要がない前提なのもよかった(後述する個人的な話にも繋がる)。

判定も寛容でストーリーに集中できるし、親切設計なのに足が遅いのはやっぱり意図的なものかも。

 

 

2.

このゲームと精神疾患うつ病強迫性障害)に絡んだ個人的な感想

 

参考記事

automaton-media.com

 

※下記の感想ではうつ病強迫性障害について触れています。

※僕個人はうつ病寛解に近いけどまだ…という段階)です。

また強迫性障害に関しては診断された訳ではないけれど、小学校高学年くらいからそれらしき症状があります(抗うつ薬の効果もあるのか、日常生活で適当にごまかしながら生活できている程度)。

感想についても、自分の実経験に基づいた(主観的な)記述が多いですが、ご了承ください。また単に僕が個人的に感じたことであって、同じ疾患を持つ人々が同じことを感じる訳ではありませんので、その点ご留意ください。

 

 

2-1.

このゲームを知ったきっかけ

実はリリース前くらいからこのゲームは知っていて、「精神疾患を持つ作者が~」という部分もあり興味を引かれていた。

僕個人は臨床心理学的なもの全般について興味があり、学生時代には独学で本を読んだりしていた。その行為は何となく「仲間を探したい」という意思によるものだったと思う。

医学的知識はなくても、そういう「自分と近い感覚を持つ他者」の話を聞きたかった。

 

プレイ後に上記リンクのインタビュー記事を読んで、本人が病名を告白するのみでなく、さらにその体験を表現したい・体験してもらいたいと、病をテーマとして重視していたことに少し驚いた。

そこまで強いメッセージ性がなくとも、ホラーゲームとしてはきちんと成立しているから。

 

 

2-2.

システム面について

上記でも触れたが、このゲームでは色のついたオブジェクトにしかアクションを取れない。これは個人的にすごく有難かった。

というのも(これも強迫的行動の一つかもしれないが)隠し要素もできる限り拾いたいというこだわりが強いので、何もない場所でも怪しいと感じると細かく調べてしまう。

 

序盤はいつも通り重箱の隅をつつくように調べまくっていた。だが次第に「あ、このゲームはそういう隠し方をしないな」という信頼のような感覚が生まれ、ストーリーに集中できた。

作者は上記のインタビューで「没入感を生みだすため、『Neverending Nightmares』のゲームプレイはわざとシンプルにしている」と言っていたが、まさにそのような仕様になっており、プレイ後にインタビュー記事を読んですごいと思った。

 

 

2-3.

個人的に、強迫的だと共感した部分(その1)

加害恐怖(誰かを傷つけてしまうかもという妄想にとりつかれる)というものがある。

このゲームでいうと(多分たった一人の家族の)妹が死んでしまったら、あるいは自分が妹を殺してしまったらどうしよう、という心理描写なのかなと思った。

彼女が誰かに殺される/兄(自分)が殺してしまう/自殺してしまう、と様々なパターンが現れるのは、彼が危惧していることの一つ一つなのかもしれない。

 

僕は加害恐怖に近いものとして「自分が幼い子どもをじっと見ていたら、その子に災いが起きるのではないか」「自分が生放送でスポーツや危険を伴うパフォーマンスを観ていたら、失敗したり事故が起きてしまうのではないか」というのがある。

無自覚な邪眼というか…(厨二病とかではない。が、うまく説明できない恐怖感がある)。

 

だから生活する上でそういう(このゲームでいうと「妹と関わる」)ことは避けられないのだが、どうしても日常に加害恐怖が入り込んでしまう。

(自分含め)加害恐怖的な症状のある人は、そういう漠然と存在する「かもしれない」ルートを想像してしまって、頭にこびりついて離れない。

 

因みに、そういう人が実際に凶行を犯すことはしないし、しないこと自体は本人も十分わかっているのでご安心ください。(個人的意見)

でもそういう不安がずっとついてまわるんです。という感じ…

(この辺が気になる人は医学的な情報や文献を調べてみてください。でもいまだに諸説あるのが現状です。できるだけたくさんの情報を見て、医学的にも様々な解釈があることを知ってもらえると嬉しい、ごく個人的な願いだけど……。)

 

 

2-4.

個人的に、強迫的だと共感した部分(その2)

ベールで顔が覆われた人形の顔を見る。動物の死体を見る。これによってストーリーが分岐している訳ではない(多分)。けれどもそういう「凝視してしまう」感覚もまた、強迫感を抱きながらしてしまう行為ではないかと思う。

 

僕が幼少の頃、ポケモン映画『ルギア爆誕』を観に映画館に行くと『ハムナプトラ』のクッッソデカいポスターがあった。剥がされた顔の皮膚のような、目の部分が真っ黒なあれを……

不幸にもそれを見てしまった子どもの僕はひどく恐怖したが、目を離さずにはいられなかった(という記憶がある)。これがきっかけでしばらく映画館へ行くことを拒否する程のトラウマになった。

 

あとは、『不安の種』のおちょなんさんとか。好きな絵描きさんが描いてるのを見て検索した。怖かったが、目を離してはいけない、恐怖を感じたらその分だけ何度も、自分の視界に曝露しなければならない、というような強迫観念に囚われた。

まあ、そうこうしているうちに結果的に見慣れてしまうのですが……

 

 

そんな「お前(自分)はこのおぞましい光景を脳裏に刻み付けなければならない。視界からそれが無くなっても想起できるほど詳細に、脳裏に焼き付けなければならない。」という強迫観念。

肝試しとか悪ふざけではなく、論理的な理由もなくただ「そうしなければ」という強制的な脳の指令に従わざるを得ない感覚。

(これは強迫性障害の深刻度なのか、うつで病院を受診する直前が一番ひどかった。その後うつ病治療と共に「加害恐怖」「そうしなければという感覚」「確認行為(カギかけたかとかのやつ)」は落ち着いてきた。ゼロにはならない。)

 

もしこのゲームの作者がそういう強迫観念を持っており、上述した”見るアクション”がそれを再現した演出だったならば、本当に共感できる。

「リアル」だなと思うが、一方でこれが「リアル」であると感じない人たちもいる。まあそれはそれでいいかと、個人的には思う。

 

 

あと、不安が強い人間は嫌な方向に想像力が豊かだったりする気がする。自傷行為的なシーンは作者の夢やイメージだとのことだが、僕もよく変なことを考えてしまう。

例えば……そこそこ重い円形の折り畳みテーブルを持ってるとき「手が滑って足の指の上に落として、テーブルがゴロゴロ転がって足の指が全部切断されたらやだな」とか。考えてしまう、否応なく。

 

 

2-5.

結末について

インタビューで作者は「自由に受け止めてほしいから、ストーリーに関してはくわしく話したくない。」と語っている。

その上で、悪夢に対峙した人間の感情を通して、精神的な病に対処するとはどういうことなのか考えてほしいと語っている。

(日本語訳インタビューを読んだ上で書いてますが、誤読してたらすみません)

 

このゲームにトゥルーエンドや、(「悪夢」は終わったとしても)恐怖・不安の終わりはないというのも、精神病理的な不安感が一生ついてまわることを表現している気がして、いいなと思った。

「いいな」というのは「同質の原理(端的に言えば、感情と一致した音楽を聴くと癒されるという現象)」的な意味で。自己卑下癖でつい「僕なんかが共感してもいいのだろうか」と、少し思ってしまうけれども。

 

 

2-5-2.(07/17追記:全分岐回収後)

全分岐回収

全エンド(分岐は4か所、エンドが3つあるので正確には全分岐)回収しました。

1つの分岐では見られない映像やオブジェクトがあって、それぞれ悪夢の特徴が異なっていて面白かった。せっかく途中から始められるし、最初から1周するのはだるいけど世界観は好き、っていう人は見た方がより深く楽しめると思う。

 

(分岐選択時に「続きから/もう一度悪夢を見る」2つあるが、続きからだと「話が分岐する直前地点のベッド」から目覚め、もう一度悪夢を見るだと「そのチャプターの冒頭ムービー」からなのかもしれない。

なので分岐回収したい場合は「続きから」を選べばいいのかな、多分……

どちらを選択しても既にクリア済みの分岐は消去されず記録されてるので安心。)

 

 

僕が1周目でクリアしたのは「Destroyed Dreams(崩れた夢)」で、それを元に書いたのが上記記事です(だからこのルートにしか出ない「斧を持った主人公」→加害恐怖に関する内容を書いていた)。

 

他2つのエンドだと不安の毛色が違っていたので、少し追記。

「Wayward Dreamer(気ままな夢見る者)」

「妹が自分の届かない所に行ってしまったらどうしよう(特に、自殺してしまったら…)」という雰囲気。病棟と自宅のイメージが混在して、周りが人形だらけになる。「襲ってくる人形」はこのルートで登場。

妹であっても他者は他者なので、愛しているのに自分の制御下にいてくれない存在への不安なのかも。このエンドだと眠っている妹に会えるので、少し安心感がある。

 

「Final Descent(結末への転落)」

一番色んなエリアや恐怖のイメージが多いルートで、序盤に出てきた要素も混じってごちゃごちゃな感じ。「襲ってくるGabby」はこのルートで登場。

ビリヤード台と動物の剥製が置いてある部屋はこのルートでしか見られない?(多分)ので、このルートが唯一「大人になり結婚した主人公のラスト」なのかも。

このルートだと妹は初めから存在しなくて、妻と娘がいたけど何らかの理由で娘を亡くし、妻もおかしくなってしまった彼を救えず去ってしまう。

強いていうなら「死そのものへの恐怖、命は儚いという事実への恐怖」だろうか。

 

 

結果、どのエンドも形が違えど「悪夢が終わっただけ」であり、現実を打開するとか不安が全くなくなる訳ではない。だからまた悪夢に囚われるかも……という部分は共通している。

それぞれ三つの恐怖の方向性は違えど、全てが彼の恐怖の一部だと思う。

※別に「これが正解」とかではないです!念の為。

 

 

プレイしていて思ったのが、このホラーゲームは「嫌気がさすような怖さ」のあるゲームだと思う。ゾンビを倒したり霊障を探したりと能動的な方向ではなく、主人公は常に受動的で、恐怖にとりつかれて彷徨っている。

この「自分はただ彷徨うしかない」という所がテーマだなあと感じるし、恐怖や困難にどうしても抗いたい!と感じる人には苦痛なゲームなのかもしれないと思った。

 

 

 

そんな感じです。