壁打ち

感想、考察、日記、メモ等

『Moonscars』感想(考察編)

※ネタバレ有り。全ての登場人物や出来事に言及してるわけでもないです。

※日本語版しか見てないです。本当は英文を読んだ方が正確だろうな~と思いつつ…誤読もあるかもしれないので、話半分で読んでください

 

攻略編は下記。

blue-442385.hateblo.jp

 

=ストーリーの印象=

ブラボとかブラスフェマス系のイメージ(中世欧米の世界観、宗教や信仰…)だったが、それらより「私は何者なのか」というアイデンティティを模索するSFと哲学…と表現した方が近い。

自己存在とは何か?という問いや、オリジナル(人間)とコピー(moonscarsでいう「クレイボーン」)の対立という点に重視していたと捉えると、文章が難解だったのもわかる。

SFで全く新しい単語や文化、設定等を盛りすぎると読者が入っていきづらいように、ゲーム一周でこの内容を理解できるかというと微妙…

 

僕は色んな順路で周回してだんだんわかってきた感じです。個人的に似たテーマ(オリジナルとコピーの対立)だなと思う作品を上げると『ミュウツーの逆襲』『カイバ湯浅政明監督)』『アトモスフィア(西島大介)』とかだろうか。あと主題は違う気がするけど『ニーアレプリカント』とか…

 

 

=用語、「クレイボーン」とは、「彼女」とは(月の信仰)=

固有名詞が多くて混乱するので、近そうな一般名詞に置き換えると

・「イコル」=「血液」「魂」。人間の体内を巡回し、意志のもとになるもの。よくある魂のイメージよりも流動的で、死亡すると流れ出してしまうもの。

・「精髄」=要はイコルだが、特に「魂」的なニュアンスを表す語。

・「イコルグランド」=イコルの流れる源、「心臓」(公式では分泌腺と翻訳されている)。
・「月神経叢(つきしんけいそう)」=イコルの流れる道、「血管」。

そのうえで「クレイボーン」とは

・創造主ゾランが創り出した「実在の人間を複製した泥人形」。材料に「人間の骨粉」「一滴の人間のイコル」が使われている。

・生み出されてしばらくすると徐々に裂け目(心身共に)が広がり、痛みを感じ正気を失う。

「主人公のイルマ」は鏡(死亡モーションが発生し、分身と戦うことになるタイプのやつ)を通過する際に「古い殻を捨てる、脱皮する」ように肉体を乗り換えているので、痛みは感じつつも戦い続けることができている。

 

またこの世界では月が信仰されていて、文章に「彼女」と出てくる場合の多くは「月の神」?や「月の信仰」のことを指している。

・月が飢える(月飢)と地上のイコル(生命)が奪われる。司祭曰く、「月にはイコルが必要で、”彼女”が保っている秩序の対価としてイコルを払う=増えた分刈られる羊の毛のようなもの」。

・聖書では、人間のイコルは天上の女王(月)の子宮から生まれたとされている。

・しかし禁じられた書物には(司祭曰く)「(月の)女王が人間を創造したのは、”彼女の母親(カリナ曰く「地球」)”に自らの力を証明するためだったと書かれています。

生まれつき子を持てない”彼女”は、自分でつけた傷を利用して命を創り出しました。人間はこの傷から生まれたのです。

そうして彼女は、永遠の飢えに苦しむ運命に自分を追い込んだのです。」

 

余談ですがこの禁書の説について、カリナ(創造主ゾランの妹娘)はこの話を信じ、月の司祭ヴラディスラヴァとアデリンカ(創造主の姉娘)は否定しています。

司祭は「イコルは女王より賜ったものではなく、個々人から湧き出るもの。

聖書に書かれたことは「安らぎと信奉」を庶民に与えるためにすぎない。庶民にとって「物質が精髄を生む、すでに作られたものが体内にあるだけでその他の意味はない」という事実は耐え難いだろう。」…とのこと。

唯物論的な「物質があるから魂がある」という考え方らしい。

 

 

=時系列=

(現代の我々の住む地球=遥か昔、とされている)

月の神?の支配、信仰が始まる

「創造主」ゾラン、”最愛の者”(妻や娘?)を作るためクレイボーンの作製を開始

初期のクレイボーンはアデリンカ、第一の者?等。

〇隣国からの侵略、戦争状態

劣勢の中、ドラハン王がゾランにクレイボーンの軍隊を作るよう命じる

レイボーン軍により戦況逆転、優勢に

〇疫病の流行

子どもが死に、女性が子どもを産めなくなる

ヤドウィガ王妃の赤子やイルマの妹もこの疫病で亡くなっている

※子どもの遺体は国が回収し、ゾランに骨粉として与えた

徐々にクレイボーンの軍隊が壊れ狂暴化、王はゾランに対策を命じる

ヤドウィガ王妃の赤子をクレイボーンとして蘇らせたが失敗、狂暴化

戦に生き残った4人の人間の若者「穢れなき戦士たち」、狂暴化した軍隊を討伐する

ゾランは人間より完璧で性能が良く従順な「穢れなき戦士たち」のクレイボーンを作製

※4人の戦士の型を取った上で、ゾランのイコルを与えた。

※4体のうち「無欠の器」を持つ者がいたが、その1体がどれかは分からなかった。

そのため「穢れなき戦士たち」の人間勢とクレイボーン勢に別々の説明?をして、互いを憎み合い対立するよう仕向けた。クレイボーン側にはグランドを悪意で満たし、お互いを戦わせた。その上で生き残った者が「無欠の器」であると考えた。

※ゾランは「精神合流」という目的を達成するため「無欠の器」が必要だった。

〇「例の夜」穢れなき戦士たち4人の人間とそのクレイボーン達がお互い殺し合う

(緋色のイルマ(人間)が他3人を殺した?その後クレイボーンに相打ちさせて自分は生き残るという目的だったのかも)

緋色のイルマ(人間)と4体のクレイボーンが生き残る

〇緋色のイルマ、ドラハン王を殺害

【ゲーム開始時はここ】

灰色のイルマ(主人公)は瀕死状態から立ち上がり、謎の声?やエダラグに導かれ造形主に会うことを誓う

緋色のイルマは「月の司祭ヴラディスラヴァ」を騙り、主人公に助言する

やがて過去の自分や仲間は「無欠の器」を求めたことを知り、それを探すことを決意

目的を果たすため、自分の分身やクレイボーンの仲間を倒しながら進む

司祭の正体が緋色のイルマ、自分のオリジナル(元となった人間)だったことを知る

月と融合した緋色のイルマを撃破することで、オリジナルと月からの支配から脱する

月飢が発生しなくなる

アデリンカにイコルを託される(=イルマの体にゾランとアデリンカ両方のイコルが流れることとなる)

造形主ゾランと出会い、真の目的を明かされる

〇造形主の目的

無欠の器に全てのクレイボーンに共通して流れるイコルを流し込み、「精神合流」を果たす。精神合流が起こると全てのイコルは一体となり、自他の区別はなくなる。

その方法でしか、争いを収め平穏な世界をつくることは叶わないと造形主は考えている。

灰色のイルマは今までの旅を通して自我が芽生えた。その上で造形主の考える「精神合流でもたらされる平穏」を否定し、個が個として生きるために造形主を打ち倒す。

造形主を倒したイルマは傷ついた体で地底の大釜へ向かい、グランドを大釜へ投げ入れ、自身の自由を得る

※おそらくこの「傷ついた灰色のイルマ(主人公)」は死に、新たなイルマ(≠主人公)が大釜から生まれる。最期にイルマが口にする「自由」とは、「この大釜から新たに生まれるイルマ」が個としての自由を得られるだろう、という意味?

 

=イルマの仕組み=

※多分こうだと思う…個人的な推測。

「主人公の」灰色のイルマはしばらくの間、自分がオリジナルな存在だと思っているらしい。冒頭の状態では傷つきすぎて戦えないので、着替えるように泥の肉体を仮のものとして扱っているというか…。

なので「主人公のイルマの考え方、話すこと」と「過去や真実を知っている者たち(穢れなき戦士たちの亡霊、エダラグ等)の話すこと」はすれ違い続けている。

 

小説なら地の文で何かを匂わせたりもできるが、ゲームだと伝わりづらい部分なのではないかなと思った。叙述トリックっぽいというか…本人が事実に気づいていないという点では『シックスセンス』っぽいというか…

 

 

=登場人物追記=

全員分ではないです。補足しておきたい所だけ…

 

■造形主の一族と、クレイボーンのイコル

おそらくこの世界のクレイボーンは、「ゾランのイコル」と「アデリンカのイコル」を源流としている。その上で、主人公のイルマのように何度も「自分の抜け殻に宿ったイコル」を吸収していくと、自我というか個としての存在のようなものが生まれる、らしい。

※メモ書きに「灰色のイルマは、「例の夜」に緋色のイルマに造形主のイコルを奪われた」と書いてあったがどこか思い出せません…緋色のイルマが「無欠の器」となる可能性もあったんだろうか。

 

〇「造形主」ゾラン:「造形主」と言うと神っぽいが、人間。「最愛の者」をつくるために泥人形を作り出した。造形主の妻は凄惨な死を遂げた、ということだけが知られていて実際に妻を目撃した者はいない。
精神合流についてゾランは「作品(クレイボーン達)を一つの流れにまとめる、意志の交わり、心の集合を実現する」と説明し、無欠の器は支配するための道具などではないと語った。(人間の戦士たちには「無欠の器が手に入れば世界を支配できる」とか説明したのかもしれない)
またそれによって月の信仰や支配から脱することを目論んだ。

 

〇アデリンカ:最初のクレイボーンのうちの一体。本来は大人の女性だったらしい。

子どもの肉体から脱せるように造形主は試行錯誤したが失敗に終わった。(アデリンカ本人が「ただの女の子でいることに決めたの」と語っているところを見ると、本人にその意志がないことが失敗の原因?)

その後王からの要求(クレイボーンの軍隊をつくること)に応えるため、アデリンカのイコルが使われたクレイボーンが生産された(アデリンカが父ゾランを助けるためにそう願ったとのこと)。

自分の殻から分身が生まれるのをよしとせず、敢えて「脱皮」しないので泥の肉体が壊れるとその場で死亡する(イコルも流れ落ちる)。

※「脱皮」しないのにもかかわらずなぜ毎回アデリンカが「生じて」いるのか?

→クレイボーンが生まれるとき、アデリンカになることを望むから?(憶測)

イルマが自分の分身について、複製され続けるのは何故かという問いにアデリンカが「そうありたいという願いがそうさせている」的なことを言ってたので…

つまり誰かがアデリンカの流れ出したイコルを拾って統制しない限り、アデリンカは「生じ」続ける=死ぬことができない。イルマにイコルを渡したとき「二度と泥に戻さないで」とお願いしていたのは、イルマにイコルをコントロールしてもらえれば「無限に続く生」から抜け出せるからでは。

 

 

■穢れなき戦士たち

〇緋色のイルマ(=月の司祭ヴラディスラヴァ):穢れなき戦士(クレイボーンの一団)に加わっていた人間だが、ゾランを裏切り仲間を殺した(と思われる)。ヤドウィガ王妃の即位、月の信仰による統治を願っている?

司祭の時にイルマが「人間とクレイボーン同士の嫉妬」について聞くと、クレイボーンは愛情や理性のない単なる獣なので自分は妬んだりしないと答える。
しかし実際は、完全無欠で人間を上回る性能を持ったクレイボーンを憎んでいた。

 

〇「裏切者」チョクラン:クレイボーンに対し友好的だった、という意味で「裏切者」というのは人間の側から見た呼び名。実際に仲間を裏切ったのは緋色のイルマ。

城内に入る前に倒したはずのチョクランと会話するシーンがあるが、倒したのは「クレイボーンの」チョクランであり、城の前にいるのは「人間の」チョクランの亡霊。

序盤のイルマは「自分は人間だ」と思っているので、チョクランを裏切者だと思っている。実際には、人間のチョクランは人間の仲間ともクレイボーンとも対立はしなかった(多分)。

 

※よく見ると冒頭に出てくる回想シーンのような「穢れなき戦士たち」は体が透けている。これはエリアの色合いとかではなく「亡霊である」ということ

 

 

■王の一族

〇ラジョス:ドラハン王とホルピナの間に生まれたが、王位継承を拒んだ。人間のラジョスは鎧を着た男性の姿だが、クレイボーンのラジョスは異形化している。

 

〇ヤドウィガ王妃:疫病が流行したのは、ヤドヴィガが月に「女性という束縛からの解放」を祈ったためかもしれないと王妃自身が語っている。その願いが歪んだ形で成就して、生まれる子供はみな死んでしまった。

Fate/Zeroの聖杯のような願いの叶い方…?

 

 

〇エダラグ:創造主や他の世界を行き来できる?冒頭のムービーで造形主に「お前も穢れてしまっている」と言われているので、おそらくクレイボーン

頻繁にその場にいない造形主に話しかけたり、イルマに対し「自分が見えるのか」的な反応をしている。おそらくイルマが(「主人公」の前にもイルマのクレイボーンが存在したような台詞・場面があるし)何度も複製されるうちに、自我を持ちはじめていることへの驚きとか嘆きとかを表しているんだと思う。

多分エダラグの台詞が一番難解で捻った言い回しとかがされているので、読解するのが困難。

 

 

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僕の読解力でわかるのはこれくらいですが、多分違ってる所とか拾えてない台詞とかあると思います。

他の人の実況とか見ると知らない会話があったり、順路をそのまま進んでるだけでは回収しきれないほど色んな人物が割と重要な話をしてるので……時限ありで……

 

 

以上です。